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「あきんどPLAZA」の事務局です。 今年度第11号、10月25日号です。 さて、今回から新しい連載が始まります。まずは、地域におけるコミュニティとしての商店街の再生にご尽力されている、静岡県の清水駅前銀座商店街振興組合理事長 野口直秀氏に商店街再生の現場からの声を2回に分けてお届けいたします。野口氏は家具店を経営され商店街の理事長など公職を多数引き受けられるとともに、中小企業基盤整備機構の商店街活性化シニア・アドバイザーとしても活躍されており、商店街の論客としてご存知の方も多いと思います。 次に、商店街の店舗向けの情報として、顧客の購買心理を活用した店づくりについて、すぐに役立つ実務情報やノウハウをご提供いたします。店づくりや品揃え・接客といった店舗運営は、お客様の心理を理解することでより一層支持を得ることができるはずです。ご執筆は、中小企業診断士で有限会社テオリア取締役社長の八木田鶴子先生です。第1回は導入編です。 そのほか、これまでどおり商店街のホットな事例紹介も行ってゆきます。 皆様、今後とも「あきんどPLAZA」をよろしくお願い申し上げます。また、このメルマガへのご意見・ご感想も下さいね。
■清水駅前銀座商店街 私たちの清水駅前銀座商店街は、JR東海道線清水駅に隣接する長さ435mの全蓋アーケードとカラー舗装された商店街で、戦後闇市として商店が集まり最盛期の昭和50年には丸井・長崎屋がありその2核をつなぐ通りとして、また周辺にも西友・ヤオハンが立地し、江尻宿として江戸時代から続く清水銀座とともに旧清水市の中心商店街を形成してきた。130店舗組合員数94の商店街です。 いま少しずつ商店街が変わろうとしている。そのきっかけは8年前に組織改革が行われたことにある。理事を地区単位で順番に出すことをやめ、完全な選挙制にしたことで、理事の顔ぶれが大幅に変わり、商店街の進む方向が少しずつ見えてきた。社会情勢も商店街を取り巻く環境も、そして市民が商店街に望むものが変化しているのに、旧態依然の組織や考え方ではもはや生き残っていけないという状況だ。 ■商店街の現況 とはいえ、状況は厳しい。現在は丸井・長崎屋・ヤオハンは撤退。通行量調査では1975年と2003年の比較では休日が84%減、平日が72%減である。群馬県前橋市中心部の調査でも85.5%減(1998/1975休日)という数字があるので、全国の商店街の平均的姿がこの数字に表れている。 清水でも商店街の要職にあった老舗の大店が、最近相次いで破産・廃業していった。経営努力もし、有能な人たちが、である。蓄えをはたき借金を負い、落伍者の烙印を押され、自分の今までの人生を否定され、築いてきた多くの人とのつながりを断たれてこれからの人生を生きていかなくてはならない。多くの商業者がそのような不安を抱えながら生きている。 ■地域コミュニティとしての街づくり 市民はもはや物を売るだけの商店が建ちならぶだけの街を望んではいない。ではどのような商店街活動を行えばいいか?単純に従来の販売促進事業ばかりやっている商店街は、市民の支持を得られず労多くしてその効果が上がらない。商店街活動は行き詰まりを見せ組合員の心が離れる。 商店街の定款に沿っていえば、相互扶助の精神で役員を選び、共同売出しをし、アーケードやカラー舗装などを作り(環境の整備改善)、組合員の事業の健全な発展=売上を上げることを目的としている。結果として、安全や雨風をしのげるといった公共の福祉もついてきた。 しかし、その順番が変わった。公共の福祉の増進、地域の役に立つことを商店街がやること、またその拠点となることにより、その結果はじめて売上がついてくる。時代はそう変わった。足立区東和銀座の田中武夫さんの言葉を借りる。 「地域のなかで生きる商店街は、地域住民のためにある。地域住民にどう喜んでもらえるか考え、それにこたえるのが商店街である。それができない商店街ならすたれて廃業する店が出てきても、住民は商店街に同情して買い物などしてくれない。」 これからの売上は、物品販売ではなくサービス「業」(商品を売るためのサービス=無料ではなく)の比重を多くしていく。それは地域の課題をビジネスとして解決していくコミュニティビジネスを起業して売上を作る方向に行く。 商業者の意識がこのように変わらないと、商店街は残っていかない。市民に利用されなくなった商店街だが、実は生活者がまちに望むものは多岐にわたりたくさんある。高齢者の集う場所、子育て支援、教育、医療、文化活動、居住などこれらの拠点として街なかが求められている。これらをまちに集中し、商店街を物売りの場だけでなく、複合サービス提供ゾーン、生活ゾーン、コミュニティゾーンとして、つまり「商店街」から「生活の拠点街」として甦らせる。そしてそれは一人商店街が行うことではない。多くの団体、行政、企業と連携してやる。その時、エコマネーがそれぞれを結びつけるツールとして機能する。そこに人の交流が生まれ、地域の問題解決のためのコミュニティビジネスが生まれる。かくして市民に必要とされ、新たな生活の拠点としてまちが甦るというシナリオである。
小売業の売れるしくみづくり みなさん、はじめまして。今回から「顧客の心理を活用した個店の活性化手法」をテーマにこのコーナーを担当させていただきます。 お店は、お客様に来ていただき、そして気持ちよく買い物をしていただくあるいはサービスを受けていただいてこそ、その目的を果たします。そのためには、お客様の気持ちに配慮したお店づくりをしなければなりません。 本コーナーでは、お客様の心理に配慮し、上手に活用する方法についてお話していきます。今回はまず基本的な「小売業の売れるしくみづくり」についてのお話しです。 ■お店の生き方を示すストア・コンセプト ストア・コンセプトは「誰に」「何を」「どんな方法で」提供するかを表したものです。それは自店のお客様は誰かということを明らかにして、そのお客様の求めるニーズに対応した商品やサービスを、自店の持っている強みを生かした販売方法やサービスによっていかに提供していくかということです。お店のめざす方向性、生き方を示すストア・コンセプトを明確にするのはとても大切なことなのです。 ストア・コンセプトを定めるには、経営環境を理解し、自社の経営資源を分析して強みを明らかにする必要があります。 なお、お店の基本理念や経営目標を反映したものであることも重要です。 ■小売りのマーケティング・ミックス マーケティングでは「4P」といわれます。小売業における4Pの内容は次のように捉えてみましょう。
同じ業種でも、対象とするお客さまの層が異なれば、品揃えやサービスの内容にも違いが出てきます。自店の顧客ターゲットを明確にして、ストア・コンセプトにあった小売のマーケティング・ミックスを構築します。 ■お客さまに満足していただくお店づくり ビジュアル・マーチャンダイジングやインストア・マーチャンダイジングは、お客さまの買う気をそそる巧みな手法です。詳細については機会を改めて説明したいと思いますが、お客さまの心理を上手に活用した手法で満足度を高め、お店に対するイメージアップにつながります。 お客さまに満足していただくお店づくりには、マーケティング・ミックスを具体的に実施していく中で、お客さまの立場に立つことが大切です。それはお客さまの心理に配慮し、活用していくことでもあるのです。
■モトスミ・オズ通り商店街とは モトスミ・オズ通り商店街振興組合は神奈川県川崎市中原区、東急東横線元住吉駅の東口から続く通り沿い一帯にある。渋谷駅まで約30分、横浜駅まで約20分と交通至便であり、通勤には絶好の立地である。一方、元住吉駅の一つ渋谷寄りの駅である武蔵小杉駅周辺には、先端技術企業が集積し、また、一つ横浜寄りの駅である日吉駅には慶応大学があるなど、昼間の流入人口も多い所である。 商店街の歴史は、昭和25年頃からと比較的長く、古くからこの地に住み商売を営んでいる店舗が多い。このため組合員同士のコミュニケーションがよくとれており、商店街活動への協力度も高い。(組合員数121)さらに、チェーン店も全て組合へ加入するなど、コミュニケーションの良い商店街を象徴しており、下町情緒の残る、どこか懐かしい感じの商店街である。 平成3年に法人化、平成4年度に、「オズの魔法使い」をテーマにした商店街のシンボルマークを制定、その後「オズの魔法使い」にちなんだイベント・セールなどを展開してきた。周辺商業地との競争が激化する中で、安全で快適な買物環境を実現するため、平成8年度にモール化事業を行った。さらに、平成10年からはサンバカーニバルの実施(現在は中止)、大ビンゴ大会の開催など、集客力のあるイベントを実施してきている。 ■きっかけは慶応大学のボランティアサークルとの出会い 平成14年、4年間続けたサンバカーニバルを中止して、今後の街づくりをどのようにするか模索している最中であった。 慶応大学のボランティアサークルである「ピースプロダクション」がバザーに出すための寄付品を集めに商店街を訪れたことから、商店街とピースプロダクションとの交流が始まった。この出会いをきっかけに、ボランティアを中心とした、人と人との交流ある街づくりを目指すこととなったのである。 平成14年度は本格実施に向けての実験事業と位置づけ、商店街の空き店舗に交流活動を行うための仮拠点を設置。「街なかボランティア・ピース」と名づけられた。 平成14年度は、まず、ピースプロダクションが参加した商店街の一斉清掃、地元中学校でのボランティア講座の開催などを行った。「街なかボランティア・ピース」は、ピースプロダクションの海外ボランティア報告写真展、買い物客の無料休憩場、乳幼児を持つお母さんたちの交流スペース、また、土曜日は慶応大生が地元小学生に勉強や遊びを教える寺子屋塾などとして活用した。 ■地元住民も巻き込んだ検討体制で本格実施へ コミュニティ施設「街なかボランティア・ピース」を拠点とした活動をさらに充実させるために、商店街、慶応大学(ピースプロダクション)、区民生児童委員協議会、町内会、コンサルタントから構成される委員会を立ち上げ、平成15年度の本格実施の検討が行われた。14年度の実験事業の反省から、託児サービス導入の必要性、小学生の寺子屋塾のさらなる充実、情報拠点としての機能の必要性、地元への認知度を向上させるためのボランティア・フェスティバルの必要性などが確認され、実施に当たっては中小企業庁の「コミュニティ施設活用商店街活性化補助金」を利用することとした。 まずは「街なかボランティア・ピース」の施設整備から始め、託児サービスや高齢者も安心して利用することができる施設改善が行われた。 ■大好評の託児サービスと寺子屋塾、そしてボランティア・フェスティバル 「街なかボランティア・ピース」は、平日は11:00~16:00の1時間は、商店街で買物をされるお母さんに無料で託児サービスを提供するもの(現在は有料)で、買物がゆっくりできた、子どもが楽しそうだったなど、お母さんたちに好評である。 また、寺子屋塾は慶応大生が地元の小学生を対象に勉強や遊びを教えるもので、毎週土曜日の14:00~16:00に行っている。14年度の実験事業でも好評であったが、15年度はさらに参加する子どもたちが増えており、「大学生のお兄ちゃん、お姉ちゃんから楽しく色々なことを学べる」と、こちらも好評である。 また、11月には、「ボランティア精神が息づく優しい商店街」をアピールするため、ボランティア・フェスティバルを開催。ピースプロダクションによる海外ボランティア写真報告展、慶応大生による路上コンサート、マジックショーなどが行われたが、中でもカンボジアの子どもたちへの文房具寄付の受付では、ダンボール15箱分の寄付が集まり、地域住民の関心と期待の大きさが実感された。 ■ボランティアの街づくりの更なる発展に向けて こうした事業の実施によって、商店街のイメージ向上、来街者の利便性向上など大きな効果があったが、同商店街の組合員同士のコミュニケーションが良いことと、慶応大生との出会いを大事にしたことが成功要因だろう。同商店街の中野副理事長は「今後は地元の中学校、高校とも交流を深めたい」と目を輝かせていたのが印象的であった。 モトスミ・オズ通り商店街振興組合のホームページ
■北海道初のカーシェアリング 札幌市内の自動車整備会社である須賀原自動車工業㈱(札幌市西区:社長 須賀原信広)は、1台の乗用車を複数の人で共同利用するカーシェアリングの実証実験を10月から札幌市内の本郷商店街振興組合(札幌市白石区:理事長 高山郁雄)の協力によりスタートさせました。
■カーシェアリングとは カーシェアリングとは、不特定多数の人が使うレンタカーとは違い、会員となった特定多数の個人や法人が共同所有し、その車の空き時間に乗りたい時だけ使用するというシステムで、個人が所有する場合の費用(車両価格、保険代、駐車場代、ガソリン代等)を会員で負担するため、自家用車を保有するより経費を節約できることが特徴です。
■実証実験の概要 今回の実証実験は、本郷通商店街内にある3ヶ所の駐車場にそれぞれ1台ずつ配置された車を、商店街から概ね徒歩5分圏内に住むモニターがインターネットや電話で利用日時を予約し、配布されるICカードを使って、駐車場にあるキーボックスからキーを取り出して利用します。利用は無料ですが、1回当たりの利用時間を2時間以内、20km以内に限定し、運営上、さらには事業化への問題点を見いだすのが狙いです。 去る9月30日には、第1回のモニター募集の説明会が開催されました。商店街の組合員、周辺住民30名以上が集まり、須賀原社長から「今回の実証実験により、事業化の可能性を探り、採算ベースに乗れるようデータ収集に御協力をお願いしたい。実験で出た問題点、課題を一つずつ解決し、北海道初のカーシェアリング事業の本格稼働につなげたい」との熱い思いに耳を傾けていました。 ■人と車の共存と商店街の活性化を目指して(本郷商店街振興組合) 今回の実証実験の舞台となっている「本郷通商店街」は、JR白石駅や地下鉄南郷7丁目駅から近く、カーシェアリング効果の一つである、公共交通機関との連携効果を確認する意味では非常に良いロケーションとなっています。 美しいショッピングモールが自慢で、約180店の個性的なお店が並んでおり、車道を一方通行に規制し、歩道スペースが広く、至る所にベンチが整備され、ゆったりとショッピングが楽しめる憩いのある商店街です。これまでも、冬も安心してショッピングができるように歩道をロードヒーティングにしたり、自由にトイレを使用できるお店をステッカーでお知らせしたり、無料貸し出しの傘を用意したりとハード・ソフトの両面から、来街者に配慮した快適なショッピング空間を作り出す努力をしてきました。 同商店街の高山理事長は「人と車の共存できるまちづくりに協力し、商店街にもさらなる活気を呼びたい」と、今回のカーシェアリング実証実験の成功に期待しています。 <参考> 本郷商店街振興組合のホームページ カーシェアリング実証実験のホームページ
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