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はじめに 商店街の活性化策として、一店逸品運動ということばを、最近よく目にする。しかし、正直言って、正しく理解されているとは言い難く、運動とは名ばかりで、一過性の集客事業と勘違いしている所も多い。一店逸品運動は、商売の原点を見直す運動として、正しく理解して行えば、必ず顧客の獲得、活性化につながるものである。私自身のこれまでの指導実績を踏まえて、逸品運動の考え方、正しい進め方、商店街での事例紹介などを、10数回にわたって述べてゆきたい。商店街及びお店の、活性化のヒントとしていただければ幸いである。 逸品が求められる背景その1 (「欲しいものが買えない商店街」) 商店街から顧客が離れた最大の要因は、品揃えの問題である。かつて、商店街の活性化のために、数多くの調査や診断事業が実施されてきた。そうした商店街診断や調査の中では、必ず顧客調査がされるが、調査結果で注目すべきは、商店街の利用頻度の低い人たちや商店街を利用していない人たちの声である。私自身、これまで多くの商店街の診断にかかわってきたが、こうした方たちの声として最も多いのが、品揃えに対する不満である。具体的な回答として、「欲しいものが買えない」「自分にあった商品がない」「自分のセンスに合わない」といった声が上位を占めている。 ところが、こうした調査結果が出ているにもかかわらず、品揃えについては、これまで手つかず状態であった。手つかずというより、むしろ手つけず状況といったほうが正しいかもしれない。手がつけられない理由は、単純である。品揃えについては、商店街で話し合うことがタブーとされてきた。なぜなら、品揃えは商売の根幹に関することなので、他人がとやかく言う問題ではないからだ。特に、長年商売を続けてきている、商店街のお店のようなケースでは、各店の品揃えは、他人が口のはさむ余地のない問題なのである。また、同じ商店街で商売している仲間だからこそ、触れることのできない問題でもあった。「もし、品揃えについて商店街で話し合われたとしたら、収拾のつかない大問題になりかねない」そんな不安もあって、結果的に品揃えについては、「各店まかせ」ということになった。 ところが、当のお店でも、品揃えの問題は死活にかかわる重要事項のため、改善が必要とはわかっていても、着手することができなかった。そんなこんなで、品揃えについては全く改善されなかったため、消費者の「欲しいものが買えない」という声は、活性化には全く反映されていない。全国の商店街では、問題の核心に触れることができずに、駐車場問題やアーケードの改修といったハード整備、フリーマーケットやナイトバザールの開催といったイベント事業などで、顧客回復を狙った。しかし、「自分にあった商品が欲しい」という顧客のニーズを十分反映できず、消費者を「顧客」としてキャッチすることができた商店街は少なかった。 私が、一店逸品運動の導入をおすすめしている最大の理由は、長年手つけずだった、品揃え問題の解決に、逸品が活用できるからである。
IT導入で繁盛の仕組みをつくる インターネット時代も本格化して、ホームページを出している店やネットショップを開店している店も増えてきたようです。けれど、ホームページを出すことやネットショップだけがITの利用方法ではないのです。ITには無限の可能性があります。その無限の可能性に気がついて積極的に取り組むか、取り組まないかで将来に大きな差がついてくるでしょう。インターネット以前のITは非常に高価なものでした。ですから、コンピュータ(当時は、ITではなくコンピュータという言い方をしていました)を積極的に使って、企業のあり方を変えるというのは、大企業の専売特許でした。中小商店は、そんなことにあまり気を使わずに商売をしていればよかったのです。 けれど、今や、数千円の携帯電話でもメルマガが出せる時代です。うかうかしていると、気がつかないうちに近所の小さな八百屋さんがITを使い、繁盛店になっていることも当たり前に起きています。もう、「小さな店だから関係ない」と言っていられない時代なのです。 また、ITの時代とは別に企業や店のあり方も大きく変わってきています。物販の店であれば、商品を並べておくだけでは、売れない時代です。最近は、物販の店が繁盛は難しいからということで、美容院が増え、過当競争に入っています。その美容院も、カットするとかパーマをかけるという基本的なことだけでは、お客様を呼び込むのは難しい時代になっています。特別のサービスを行ったり、効率化を図ることで、お客様を呼び込み、売上・利益アップを実現しています。 私の住んでいる神奈川県藤沢市は、全国一美容院の多い街です。駅では頻繁に美容院のチラシを撒いている若者を見ますし、価格もカットでも、店によって1,500円から1万円までと一桁近い違いがあります。対象にしているお客様がまったく違うのです。 ITを使う前に、どの方向に店を持っていくのかを考えることが必要なのです。ITだけを眺めて、このITツールをどんな使い方ができるだろうと考えるのではなく、「うちの店をどんな店に変えたいのか」を決める必要があります。今まで、どの店も同じバスに乗って同じ方向に走っていました。けれど、大量生産、大量販売というバスはエンコして、一軒一軒の店が、それぞれの自動車に乗り換えて異なる方向に走らなければならないのです。 けれど、その自動車にITというターボエンジンがついているかいないかで、走るスピードは違ってきます。ITの使い方だけにこだわっているのは、自動車学校にいつまでも通っているのと同じです。別にカーレーサーになる必要はないのです。双葉マークをつけていても、行きたい方向が決まった店が勝ちです。
今年度も「あきんどPLAZA」のメルマガがスタートすることになりました。私自身、読者の一人としてあきんどPLAZAからの情報発信を楽しみにしておりますとともに、中小企業庁からも、できるだけHOTな情報をお届けしたいと考えております。 さて、言うまでもないことですが、商店街の活性化、とりわけ空洞化が進む中心市街地の商業集積活性化が大きな課題となっています。私はいつも、中心市街地の商業活性化を図るためには、3つの鍵があると申し上げています。中小企業庁としては、この3つの鍵を軸とした政策展開を行っていきたいと考えていますので簡単にご紹介したいと思います。 まず第1の鍵は、都市計画との整合性を取ることです。多くの中心市街地の人口は、住宅の郊外移転、業務オフィスの減少、病院・学校・市役所等の公共施設の郊外移転等によって減少を続けています。商業は典型的な立地産業ですので、商圏人口が減少してしまうと商売が苦しくなることは当然です。昨年11月に、国交省が公表した「政策課題対応型都市計画運用指針(中心市街地の機能回復)」においても、中心市街地活性化と都市計画との整合性を取ることの必要性が強調されており、中心市街地の機能回復をするためには、(1)中心市街地の居住人口を増やすこと、(2)中心市街地の来街者を増やすこと、(3)そして郊外における新規の住宅・商業開発を抑制すべきことが謳われています。 第2の鍵は、商業集積としてのマネジメント能力を高めることです。郊外のショッピングセンターは、計画的に開発され、ディベロッパーがすべてのテナントを統率し、共同販促、テレビCM等を含めた一体的な運営が行われています。一方、中心市街地の商業集積は、自然発生的に生まれ、地権者や建物所有者の権利関係が入り組んでいる場合が多く、一体的な組織運営を実施するためにかなりの労力を必要とします。この商業集積マネジメントの主体として期待されているのが商店街振興組合であり、TMOであります。「己を知り敵を知らば百戦危うからず」という言葉がありますが、商業集積活性も同様です。まず、自らの特徴、ターゲットとする顧客層、競合する商業施設等についてよく分析することが必要です。その上で、活性化のための戦略を立案し、複数の事業計画の中から費用対効果も含めて最善のものを選択する。実施した後の効果を検証するためのベンチマークを予め設定しておき、機動的に見直しを行うという商業集積マネジメントをしっかりと行うことが必要です。 最後に、第3の鍵は、個別の魅力向上です。特に中心市街地の商店は、高度成長期には敵なしで、極端に言えば、店頭に商品を置いておけば勝手に売れるという時代がありました。特に努力しなくてもモノが売れるという時代が長く続いたために、どの様にすれば、お客様を満足させられるかというマーチャンダイジングの視点が欠けている場合が往々にして見られます。例えば、某有名な寺の門前にある商店街は、かつては放っておいても参拝客が買い物をしてくれるという立地環境にありました。ところが、大型バスの駐車場が寺の裏に出来てしまい、なかなか商店街まで来てくれなくなったにもかかわらず、これまでの商売の仕方を変えようとしない。例えば、春の花フェスタでは、観光客誘致のため参道にチューリップの花を敷き詰めたが、商店街は迷惑だという。トイレを貸して欲しいと言っても、けんもほろろに断ったりするという話を聞きます。商売は、一過性のものではなく、来て頂いたお客様に商店街全体でおもてなしをして「また来てみたい」という気持ちになってもらうことが重要なのですが、そこがなかなか理解されていないようです。現在では委員会を作り、意識改革に向けた取り組みが行われているようですが、個店の意識改革や経営革新が重要です。 以上の3つの鍵の打開に向けて今年度も取り組んでいきたいと考えております。具体的な取り組みについては、あきんどPLAZAの中で、折りに触れてご紹介していきたいと考えております。皆様からもご意見をお寄せ頂ければ幸いです。
平成16年3月10日(水)金沢市において標記シンポジウムを開催し、2名の講師による講演及びパネルディスカッションを実施しました。参加者の評判も上々で、「多くの商店主に聞かせてやりたい」「商店に“あきんど”マインドを理解してもらう必要があると感じた」「『もうける』という商売の原点に戻ることの大切さを再認識した」等々の意見が寄せられました。シンポジウムの概要については別途報告書を作成中ですが、ここでは講演者の一人である朝日大学マーケティング研究所鈴木博道所長の講演概要について紹介します。
商人はお金に対する執着心を持て、商売にはイマジネーションが必要、智恵を出し、競争して強くなる
商人は2000年以上前のシルクロードの時代から存在する。中国で売れそうなものをヨーロッパで仕入れ、中国に渡り、売ったお金でヨーロッパ向けの商品を買って帰る。これが商人の本質。その本質を、今もう一度見直す必要があるのではないか。商人マインドは次の3つのポイントがある。「お金に対する執着心を持つ」「売れるものを仕入れる」「仕入れた商品を売り切る」。 ■お金に対する執着心を持つ 「銭のためなら命を捨てる」というくらいお金に対する執着心を持たなければならない。お金を儲けるのが商人の基本。そのためには24時間働くという覚悟も必要。 ■売れるものを仕入れる 多くの専門家が「品揃えが大切」といっているが、それは違う。品揃えを求めると売れないものまで店に置いて安心してしまう。本来、商人には目利きという機能が必要であって、その能力により成り立ってきた。売れる品物を仕入れることが大切。 ■仕入れた商品を売り切る 昔に比べて、日本人は売り切るというマインドが欠けている。仕入れた商品は売り切るという意識を持て。 次回は「商人マインド」を大いに発揮した商店の事例をご紹介いたします。お楽しみに!
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