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【第2講】
- 誇らしい商売 - |
株式会社オフィス2020新社
主幹 緒方知行 |
筆者が主宰する二つの雑誌のなかの一つに「THE店長会議」というのがある。
これは、小売や飲食・サービスの顧客接点で仕事をする店主・店長・売場のマネジャーから販売員・パートタイマーにいたるまでの現場の人たちの共感ベースの雑誌ということをうたったものであるが、この最新号に湯布院(大分県)の街おこしを行なった中谷健太郎さんへの編集長(桑原聡子)インタビューが掲載されている。筆者がこれを読んでいてとても心に残ったのは、次の中谷さんの言葉である。
「誇りを持てずしてお客さまを迎えることはできない」
――これは、あらゆる商売に通ずる考え方であると筆者は思った。そういうことで、店にせよ、商業施設にせよ、商店街にせよ、本当に誇りのもてる商いをしているのだろうかという疑問が生じてくる。商品づくりに携わっている人たちについてもこれは同様である。
一球入魂という言葉を野球のピッチャーたちはつかう。一球、一球に魂をこめて力の限り投球する。商いでいえば、入魂の商いということになるであろうか、そこまで想いをこめ、一生懸命に力の限り全力をあげて、仕入にしても品揃えにしても接客にしてもあるいはモノづくりにしても、またそれぞれ商いに携わる一人ひとりが自分の仕事に誇りをかけ、情熱を注いで取り組んでいるかどうか。この問いを商人一人ひとりがしてみる必要がある。 |
ただ何となく昨日の続きを今日もまた、十年一日ごときマンネリの、意思も想いも意図も情熱もない、したがって自分のしていることに誇りも感じることができない、こんな商いが人の心――お客の心を動かせるわけがない。
「いらっしゃいませ」といってもそれは空虚なものでしかない。自分が惚れていないものを一生懸命人にすすめられるはずはない。誇りや自負心なくして人の心を動かすメッセージを発信することはできない。
「お客さまの期待にちゃんと100%応えればそこにお客さまの満足が、そしてお客さまの期待以上お応えすればお客さまは感激してくださる。さらに、お客さまから、そこまでやってくれるの、と望む以上にはるかなお役立ちをすれば、お客さまは感動してくださり、お客さまはファンを通り越して信者になってくださる。信者をくっつけて書けば“儲(もうけ)”という字になる。不況や競争のせいにして儲からないのではない。お客さまが満足し、そして感激・感動してくださるような、お客さまにとっての価値、お役立ちが提供できていないから売れないし、儲からないのだ」とは、新宿百貨店戦争で一人勝ちをした伊勢丹新宿本店の当時の本店長の言葉だ。
この本店長は、徹底した接客サービスによって、この一人勝ちをおさめたのである。
「お客さま、どうぞいらっしゃってください」と胸を張れる誇らしい商売、そういう中身と内容価値とお値打ちのある毎日の商い(それがたとえフレンドリーな接客や心配り、気配りのあるおもてなしや徹底して客の立場に立ったお役立ちであれ)に精を出し、地域の人たちやお客の喜ぶ顔を自分の喜びだとし得る商人の生き方が、結果として繁盛をつくるのである。 |