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「融資を受けられれば、
NPOも一人前?」 |
株式会社日本総合研究所
研究事業本部 主任研究員
矢ヶ崎紀子 |
平成13年度の全振連の調査「NPO等地域との連携による商店街活動」報告書を皮切りに、商店街とNPOの連携を通じて、これまでと異なる層の集客に成功する等の短期的な成果や、商店街が地域と共に生きていく体質に変わっていくといった長期的な成果が期待できることが紹介されてきました。
現在では、商店街の方々にとっても、NPOの存在がずいぶん身近なものになったのではないでしょうか。しかし、NPOは日々進化(?)しており、ベンチャービジネス支援のNPOが出てきたり、労働相談専門のNPOが活動を開始したりと、活動分野が多様化しています。一方、行政から事業委託を受けたり、企業の社会貢献活動と協働したりと、公的セクターや営利セクターとのパートナーシップが進んできています。さらには、とうとう、商工会議所のメンバーになる道が、NPOにも開かれるようになりました。2002年3月の経済産業省の通達を受けて、「地区内の協同組合、信用金庫、公社または経済関係団体」などとなっていた会員資格が、「地区内で事業活動を行う団体」などとなってきています。日本商工会議所の調査(2002年12月)によると、NPO法人に会員資格を拡大した商工会議所は304。そのうち、24の会議所ではNPO法人の入会があり、その活動分野は、まちづくり、教育・文化振興、医療・福祉などでした。
このように、NPO業界(?)というのは、ウォッチに油断が許されない、研究員泣かせの業界であります。今日は、この業界の最近の動きについてお知らせしたいと思います。それは、NPOの最大の課題の一つである資金不足に対応する方法が着々と開発されていることです。商売の世界では、金融機関からきちんと金を借りて返済するなかで事業をまわすことができて一人前ですが、NPOにも融資の道が開かれつつあることをご紹介します。NPOと連携しようと思っている商店街のみなさん、もし、身近なNPOが資金面で困っていたら、お近くの信金や労金までご案内ください。もちろん、ビジネスプランのしっかりしたNPOに限りますが…。
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<西武信用金庫:西武コミュニティローン
(コミュニティビジネス支援ローン)>
地元で、地域貢献のためにビジネスを営む人へ、低利で無担保1,000万円まで支援(5年以内)。不動産担保がある場合には、当金庫担保評価の範囲内まで利用可能。
使途は、(1)NPO法人設立後の活動資金、設備資金、(2)認定保育所の開設資金、設備資金、または経営に必要な資金、(3)医療関連施設の設置、整備、または経営に必要な資金、(4)コミュニティビジネスの創出資金、充実資金、の4つが想定されています。原則、法人の場合は代表者、個人事業主の場合は事業承継者の保証が必要です。
近くにそんな信金はない、とおっしゃるみなさん。地銀のなかにも、同様の制度を発足させているところがあります。例えば、宮崎太陽銀行では、50万円以上500万円以内で、NPO法人に融資をしています。
NPOへの融資は不良債権になることが少なく、小額でも確実に返済が見込めるという声もあります。NPOは儲けなくてもいい団体ではなく、適正な利益をあげて、その利益を次の事業に再投資する団体です。儲けを関係者で分配しないという非営利性が本旨ですから、しっかりしたビジネスプランがある団体であれば、立派に融資対象となるのです。
NPOにとっても、助成や補助といった資金支援だけでなく、融資を受けられるということは、朗報です。融資を受けるためには、自分達のビジネスプランを他人に納得させるレベルにブラッシュアップしなければなりません。その過程で、NPOはビジネス力をつけていくことができます。そして、コスト意識のある事業実施が可能となっていきます。NPOのエンパワーメントに有効なのです。
いかがですか?また少しNPOへの見方がよい方向に変わった方がいらっしゃると幸です。 |