7.商店街マネジメントのモデル例
(1)みやのかわ商店街振興組合(埼玉県)
 秩父鉄道秩父駅前通り及び駅前交差点を挟む左右200mに及ぶ商店街で、毎月第3土曜日の夜7時から11時までナイトバザール事業を継続実施しています。全国の商店が夜6時、7時台に閉店する中で、商店街の営業時間の延長は画期的な成果です。
 
(2)烏山駅前通り商店街振興組合(東京都)
 昭和39年設立以来35年を超えてスタンプ事業に取り組み、現在スタンプ事業を軸に、カード事業、ハード事業にまで、活発な活動を展開しています。消費の8割を越す女性の研究、後継者としての青年部の育成、個店支援としての教育事業にも力を入れています。
 
(3)商店街振興組合静岡呉服町名店街(静岡県)
 静岡県の県庁所在地に位置する中核的な商店街でブランドの強さに着目した一店逸品運動を行っており、各商品は着実に来街動機、来店動機の強い商品として、いくつもの成果を生み、全国に逸品・秀品運動を展開させるきっかけとなりました。
 
(4)七日町商店街振興組合(山形県)

 山形県の県庁所在地に位置する、有力専門店で構成された中心商店街です。中心市街地活性化が叫ばれる以前の昭和39年の組合設立以来、全国のモデルとなるハード事業、ソフト事業に取り組み現在では活動を支える収益事業にその成果を見せています。

 
(5)伏見大手筋商店街振興組合(京都府)
 伏見桃山城築城以来の大手門通りとして知られる商店街であり、大型店と共存するための自助努力をたゆみなく続け、わが国初の地球環境にやさしいソーラー型アーケードを導入し、商店街のシンボルとなるからくり時計、電光ニュース板、ガイドブック発行、POSカード、活発な婦人部のモデルとなる活動などを展開しています。
 
(6)東和銀座商店街振興組合(東京都)
 JR亀有駅から7〜8分の距離にある近隣型商店街であり、病院の売店とレストランの営業権を得るため、商店街株式会社を設立した。商店街の空き店舗を活用した鮮魚店、手作りパン店の運営やビル清掃事業などを通じて、新規事業の実践に取り組んでいます。
 
(7)一番町四丁目商店街振興組合(宮城県)
 仙台市の中心商店街を構成する一番町一番街商店街振興組合、大町商店街振興組合、一番町四丁目商店街振興組合は、相互に連携を図りながら、地域の大型店と役割・機能を補完し、商店街環境整備事業や多くのソフト事業を展開しています。
 
8.商店街の業種・業態構成の是正と空き店舗問題
(1)業種・業態構成の現状(平成9年日本商工会議所調べ)

 商店街のタイプ別に店舗規模や業種構成をみると、「近隣型商店街」は、食料品、日常品の店を中心にした業種構成を特色とし、1商店街の平均55店のうち生鮮食料品がわずか3.2店しかないことは大きな問題です。「地域型商店街」では、1商店街あたり平均56店で、近隣型に比べて、規模、業種構成にそれ程際立った差はみられません。「広域商店街」になると、1商店街あたり合計店舗数は69店舗と、「近隣型」、「地域型」と比べて店舗数が多く、最寄店は11店と少なくなっています。

 
(2)空き店舗の現状(平成10年日本商工会議所調べ)
 全国の商店街のうち、空き店舗が全くない商店街は全体の16.1%にすぎません。そのうち、「近隣型」では5.5店、「地域型」では5.4店、「広域型」では少なく3.0店、「超広域型」では1.3店となり、小商圏型の商店街ほど空き店舗が多くなっています。

 空き店舗比率は、1商店街あたり平均では9.3%となっています。空き店舗比率が10%を超えると商店街全体がさびれた感じとなり、必要な業種も揃わなくなります。空き店舗比率が10%を超えている商店街は全体の実に42.2%に達しています。  また、大型店の空き店舗比率をみると36.5%に達しています。大型店の退店は中小小売店の退店とは比較にならない大きな影響を商店街に与えているのはいうまでもありません
 
(3)業種・業態転換の現状
 衣料品店と飲食料品店が空き店舗となっているケースが多く、飲食料品店が撤退した後に他の業種の店が入るなどして、直隣型の商店街でさえ飲食料品店が少なくなっています。また、空き店舗が発生し、入居者がなく空き店舗になるか、必要な業種が入らないことも多くあります。また、飲食店やパチンコ店やゲームセンターが入る例が少なくありません。従来は、望ましい業種への転換が自然のうちに行われていました。しかし、最近では、退店した後に消費者が期待する業種が入らず、必要業種、不可欠業種の補充がきかなくなっています。
 
 
(4)空き店舗の活用

 空き店舗を活用し、業種、業態の是正を図る集客力のある業種を誘導することが期待されます。商店街はかつてのように通常の物販、飲食とサービスの店舗だけでは生活者の期待に応えられず、集客力のある店舗以外の施設を持つことも求められています。また、商店街の中に民間が運営しても経済的には成り立ちにくく、生活者が求めている公的機能をもつ施設をもつことも業種・業態の是正の一つといえます。

 近隣型の商店街などにおいては、商店街が生活者に必要とされ、活気を呈するためには青果、魚、肉の生鮮3品に加え、惣菜・弁当、パンなどの食料品の店は不可欠です。現在の業種・業態構成からその商店街の性格に合った業種・業態構成の是正が求められています。どんな業種・業態が必要かをまず検討し、その業種・業態を誘導します。


 
(5)業種・業態転換における問題点
  @ 必要業種の誘致の可能性
   商店街にとって必要とされる業種・業態であっても、その業種・業態の店を実際に誘致しようとしてもなかなか困難な場合が多くなっています。
  A 空き店舗活用の際の問題点
   店舗を貸すことを家主が嫌がる場合が多く、また、貸す意向があっても、入居希望者を見つけることが困難なことが多くあります。家主が希望する敷金、家賃などの条件と借り手が希望するそれとに大きな隔たりがあることも問題のひとつです。
  B 株式会社化による商店街マーケティング
   商店街の中にあるいは別組織として株式会社、あるいは第3セクターをつくり商店街マーケティングを行い、空き店舗を活用することも必要になってきています。
9.個店経営支援システムのマネジメント

(1)個店経営支援の意義

 

「街」の核となる商店街が街路を整備したり、各種のイベント実施やスタンプを導入しても、商店街を構成する個々の店舗に魅力が乏しければ、消費者の「商店街離れ」は止められません。今、行政の支援を受けて進められつつある中心市街地活性化も、ハード面にばかりウェイトがかけられるならば、活性化という所期の目的は達成されません。個店の経営努力が「街」の活性化の基礎であり、通奏低音でなければならないのであって、従来の組織としての商店街活動に対する警鐘を鳴らすことに意味があります。  商店街は計画的につくられたショッピングセンターとは異なり、商店街を構成する個店の経営に立ち入ることは困難です。
 

(2)個店支援の方法

 

 商店街に位置する個々の企業・店舗の中には、独自に経営のコンサルティングを受けていたり、取引先等からきめ細かい支援・指導を受けているところもあります。とくに食品・日用雑貨品業界では、取引先の卸売業者あるいはメーカーから、「リテール・サポート」(小売支援)を受けているケースが少なくありません。

 また、フランチャイズシステムやボランタリー・チェーンに加盟している小売・サービス業者に対しては、本部からさまざまな経営指導が行われます。

 商店街組織による個店支援の意義は、商店街という集積を視野におき、永年蓄積された情報を生かして、商店街に立地する各様の業種・業態の企業・店舗の情報を提供し、商店街構成員の経営に資することです。

 個店支援の方法としては、情報提供と経営コンサルティングが考えられます。
 
(3)個店支援のマネジメント
 個店の支援のためには、まず、経営コンサルティングを受ける企業・店舗の費用を解決する必要があります。「定期検診」や「体力測定」と同様に、経営コンサルティングは定期的に実施することが肝心です。また、データの収集・蓄積、秘守等のデータ管理の問題も重要です。経営フォローをどうするか。「改善実施計画」についての指導・助言まで踏み込めるかどうかがポイントとなります。  個別企業・店舗のコンサルティングの結果から、商店街組織として「改善実施計画」の実行を円滑にするためには、どのような役割を果せるかを検討する必要があります。
 
(4)情報ネットワークのマネジメント
 商店街とSCと比べた場合、大きな格差があるのは情報力です。独立の中小小売業が大規模小売業と比べて劣る面も情報力です。商店街は組織として情報の発信はもちろん、情報収集・分析の体制は整っていませんし、情報分析をしたとしても、その結果に基づく統一的意思決定は困難です。しかし、前章で述べた個店支援の一つの方法は情報の提供です。また商店街自体の方向性やコンセプトを決めていくうえで、また先進事例や類似した条件下の商店街の動向を知るためにも、さらには、商店街のマーケティング展開のうえで商店街の情報を発信することは今後ますます重要となってきます。したがって、組織としての情報力強化は重要課題です。