商店街振興組合についてより一層、ご理解いただくために
1 商店街振興組合について
(1)制度誕生の歴史的背景
商店街振興組合の歴史は昭和37年の「商店街振興組合法」の制定から始まります。本法は、わが国の経済が大企業と中小企業の二重構造によって成り立っていることから、中でも、中小商業者及びサービス業者が、経済の高度成長期においてはこの二重構造の底辺にあって、非近代的な状態のままに放置され、政策の手が充分伸びていなかったことに対して、これらへの対策と実践を図ることによって両者の大きな格差を解消することを目的として制定されました。
中小商業、及びサービス業においては、そこに働く人数や取引高で国民経済の大きな部分を占めており、国民の消費生活に欠くべからざる役割や機能を果たしているにもかかわらず、資本力や技術力等で大企業との格差が大きく、特に商店街の環境整備は、アーケードの設置や街路灯、駐車場の設置など個々の事業者の力の眼界を超えるものです。そのため、中小商業者及びサービス業者が互いに協力団結して自主的に対応していくことが求められます。そこで、全国の商店街団体によって、商店街の組織化と環境整備改善を図るための国の積極的な助成を内容とする法律の制定が要請され、昭和37年に成立し、公布されました。
本法の第一条では、「商店街が形成されている地域において、小売商業またはサービス業に属する事業その他の事業を営む者等が共同して経済事業を行うとともに当該地域の環境の整備改善を図るための事業を行うのに必要な組織等について定めることにより、これらの事業者の事業の健全な発展に寄与し、あわせて公共の福祉の増進に資することを目的とする」とうたわれています。
つまり、商店街を構成する小売またはサービス業を営む事業者が、商店街を取り巻く環境に十分対応するための手段を講じるにあたって、共同して行う事業の推進母体としての組織を制度化したものが、この「商店街振興組合法」なのです。従って、本法に基づいて法人化することの目的の1つは、構成員たる事業者の健全な発展に寄与する共同経済事業や環境整備事業を行うことにあります。
(2)商店街振興組合の組織について
商店街振興組合は、昭和37年に制定された「商店街振興組合法」にのっとって組織化される商店街の法人組織です。
また、この組織の目的は、商店街が形成されている地域において、商業、サービス業、その他の事業を営む者等が団結して共同で商店街の「環境整備事業」や「共同経済事業」を行うことにより、商店街の振興・発展とその地位の向上を図っていくことにあります。
事業協同組合が中小小売商業者のみで組織されるのに対し、商店街振興組合では大企業(大型店、銀行、事業所等)、非事業者(個人等)も地域の関係者であれば組合員に加えることができます。そのため、組織力はより強固なものとなるとともに、統一的な活動が可能になります。また、任意組織に比較して社会的信用が高まり、国や地方自治体の各種振興施策が活用できます。と同時に、組織運営において役員や執行部が設けられるため、役割分担ができるようになります。
商店街の設立には次の要件を満たしていることが必要です。
- 市(都の区を含む)の区域に属する地域にあること。隣接する町村にまたがる場合は、
その大部分が市に属していること。
- 小売商業またはサービス業を営む者30名以上が近接して商店街を形成していること。
近接する事業者が30人に満たない場合は、隣 接する商店街と法人化目的が統-できれ
ば、同一法人として法人化を考えることも可能である。
3.他の商店街振興組合の地区と重複しないこと
- 組合員たる資格を有するものの3分の2以上が組合員となり、かつ総組合員の2分の1
以上が小売商業またはサービス業を営む者であ ること。またこの場合のサービス業と
は、営利事業者のことをさし、税理士、医師、弁護士などは営利事業者とはならず、2分
の1の 要件には含まれないので注意が必要である。
以上の要件を満たし、7人以上の発起人によって手続きを行い設立していくことになります。
2商店街振興組合設立のメリット
(1)商店街助成策の受け皿としてのメリット
《補助金や高度化融資が受けられる》
アーケード、カラー舗装、駐車場、コミュニテイ・ホールなどの公共的な共同施設を整備する場合、国・県の補助金が受けられる他、中小企業事業団の高度化融資(長期で無利子もしくは低利の非常に有利な融資)が利用可能となります。
《国や自治体の各種振興施策も利用できる》
国や自治体では、商店街近代化等に関する各種振興施策も、ハード・ソフト両面にわたり講じておりますが、法人化されると全面的に活用することができ、商店街の近代化・活性化に積極的に取り組むことができます。
(2)情報入手のメリット、商店街指導が受けられるメリット
都道府県商店街振興組合連合会(都道府県振連)は、47都道府県の全てに設立されており、それぞれ地域に根ざした事業活動を展開している他、全国商店街振興組合連合会(全振連)の会員となっています。各組識がピラミッド型に形成されたネットワークになっているので、商店街振興組合設立後も、あらゆる面において、地域の情報に加えて全国的な情報も入手でき、様々な情報収集・交換等が行えます。また、諸問題についての指導・相談等にも各種指導機関により応じてもらえます。
(3)税制面での優遇措置が受けられるメリット
平成10年度現在、次のような優遇措置が講じられています。
☆法 人 税‥……‥…・・普通法人30%に対して商店街振興組合等は、25%
☆固定資産税‥…・…・…‥商店街振興組合等の事務所・倉庫は免除
☆事業所税‥…‥…・…・課税基準が1/2に軽減
この他、登録税、印紙税、事業税、不動産取得税等で、一部減免の措置が講じられています。
3 商店街振興組合を設立するには(設立の手順)
(1)設立準備に入る前に確認しておきたい事項
商店街振興組合法上の確認事項
◆商店萄振興組合の地区は、小売商業又はサービス業を営む者30人以上が近接している市(都の区)の区域であること/商店街振興組合法第六条
◆商店街振興組合の地区は、他の商店街振興組合の地区と重複するものであってはならない/同第七条
◆商店街振興組合の組合員たる資格を有する者2/3以上が組合員となり、かつ、総組合員の1/2以上が小売商業又はサービス業を営む者であること/同第九条
法律以外の確認事項
◆設立目的の明確化
目的がはっきりしないまま設立作業に入ると、合意が取れずに途中で挫折したり、設立ができたとしても組合としてのメリットを十分に発揮できない場合が多い。この段階では、少なくとも商店会の役員レベルでの意思統一は欲しい。
◆合意形成の可能性
設立の合意が取れるかどうか、大まかな事前判断が必要である。一度取組に失敗すると、再度挑戦するためには、多大なエネルギーと時間が必要になる。積極的な対応の中にも慎重な配慮が望まれる。
(注)「組合員資格を有する者」
小売商業者(飲食店含む)、サービス業者及びその他の事業者/同第九条
(2)商店街振興組合設立のステップ
(注)組合の設立作業には専門的な知識も必要ですが、十分な支援が受けられる体制が整備されていますので心配はありません。
(3)各ステップの説明
① 準 備 段 階
ア.設立のための合意形成
組合の設立は、合意さえ取れればほぼできたも同然であると言われていますが、組合設立への合意は、商店会員の商店街活性化へ
の意識革命の第一歩となるものです。
このため、合意の形成はリーダーにとって大きな負担を強いる作業となりますが、最初の理解が不十分であったり、主旨が不徹底のまま見切り発車すると、設立作業に入ってから、「なぜ組合にする必要があるのか」「役員が勝手に進めている」等の批判や不満
が 噴出し混乱を起こす結果となり得ますので、粘り強い意識づけと啓蒙が必要です。合意を促進するための手順はおおむね以下のとおりですが、県振連等の指導機関を上手に活用するとよいでしょう。
・このプロセスの主な目的
◆法人化の目的と必要性についての意思統一
◆商店街振興組合についての理解促進、目的、設立要件、仕組み、権利と義務、メリットとデメリット、費用等
・啓発、周知促進の方法
勉強会・説明会、成功している商店街の視察、歴代会長・実力者の支援要請、個別の説得、県振連等指導機関の活用「法人化ニュース」の作成、アンケートの実施と分析
イ.設立する組合の地区設定
商店街振興組合は地域を限定して設立されます。このため、組合設立にあたっては当該組合の対象とする地区を設定しなければいけません。
◆“小売商業又はサービス業を営む者30人以上が近接しているか”“他の商店街振興組合と重複していないか”を調査して組合設立時の地区を想定する。
◆都市部では「地区の重複」、地方では「30人以上近接」にとくに注意が必要である。
◆調査の結果をまとめて、想定した地区の全ての建物と地番(住居表示番号)を記した地区図(案)を作成する。
(地区図は設立認可申請書に漆付する資料となる。)
ウ.有資格者数の確認と加入者数の推定
地区の目処がつけば、その地区内の有資格者と加入者数の推定を行い、加入者がどの程度になるかを予測します。
◆“加入者は30人以上か”“資格を有する者の2/3以上が加入しているか”“加入者の1/2以上は小売商業又はサービス業か”を調査 する。
◆都市部ではその他の事業所が1/2以上になっていないか、ビル内のテナントは全てカウントし有資格者に算入しているか等のチェックがとくに必要である。
◆この結果は、業種別人員一覧表(案)にまとめ組合員数、加入率、業種構成を確認する。
(業種別人員一覧表も設立認可申請書に添付する資料となる。)
② 発起人の選定
ア.発起人の選定と発起人会の開催
準備作業にある程度目処が付いた段階で、正式に発起人を選び、随時発起人会を開催し、 次のステップに作業を進めます。
◆発起人は7人以上の選定が必要である。また、発起人の中から発起人代表を選ぶことになる。
なお、途中で退任する人が出ることを想定して1人~2人余分に選んでおくほうが賢明である。
◆発起人は個人事業の場合は事業主、法人の場合は代表者であることが条件となる。
◆名前だけの発起人ではなく、組合設立の趣旨をよく理解し、設立に意欲のある人が就任すべきである。
イ.設立同意を求める作業
発起人会の役割の中で、最も重要な仕事は設立の同意をとりまとめることです。手続きとしては、設立趣意書と設立同意書を作成し、これらを配布した上で設立同意書に署名捺印を求め回収します。この段階で、地区図及び業種別人員一覧表が確定することになり ます。
ウ.創立総会に必要な書類の作成
創立総会において審議する事項についての議案資料を作成し、総会の準備にはいります。
作成書類
・定款(地区、組合員資格、事業、その他の事項を定める。)
・事業計画、予算案(初年度、次年度の2年分を作成する。)
③ 創立総会開催(準備)
ア.創立総会の公告
創立総会を開催するには、それに先だって公告をすることが義務づけられています。
◆公告の時期:会議開催日の少なくとも2週間前
◆公告の場所:組合員たる資格を有する者に周知徹底できる場所
◆記載内容:創立総会の開催日、場所、定款
イ.創立総会の開催通知
法的には公告だけで要件を満たしていますが、実務上はこれだけでは不十分な場合もあるため、設立同意者に対して開催の通知を行います。
ウ.創立総会開催の段取り
創立総会開催に備えて、その他にも以下の段取りが必要です。
出席者の確認作業、創立総会次第の作成と役割分担、議案審議資料のチェックと準備
④ 創立総会の開催(運営)
創立総会当日の主な作業と議事次第は以下のとおりですが、創立総会は発起人の責任のもとに開催されるもので、その運営にはおおむね発起人があたります。
◆総会成立の要件
「創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者であってその会日までに発起人に対して設立の同意を申し出た者の半数以上が出席して、その議決権の2/3以上で決する。」同法第35条5項
◆「役員選任の件」/第8号議案
役員の選挙は、「無記名投票」によって行うのが原則であるが、「指名推薦制」の方法を用いることも認められており、実際はこの方法がよく採用されている。
なお、役員選任後直ちに第1回理事会を開催して代表理事(理事長)及び副理事長を選任することになる。
⑤ 都道府県知事あて設立認可申請(又は市長)
創立総会にて正式に設立が決定した後、速やかに下記の書類を整え、都道府県知事(又は市長)あて認可申請を行います。
必要書類
・認可申請書、添付書類(定款等)
・地元の商工会譲所、商工会の同意書(都の区、政令指定都市に設立する場合は不要)
(注)申請書を提出する行政庁は都道府県知事ですが、区市等に権限を委譲したり、区市を経由して提出するようになっている場合もあります。
⑥ 設立の認可
設立が認可されると、行政庁担当部署よりその旨連結を受け、認可書を受け取ります。
⑦ 設立認可後の手続き
ア.理事への事務引き継ぎ
行政庁の認可の後、発起人は停滞なく理事に設立事務を引き継ぎ、これによって発起人の任務は終了します。
イ.出資払込請求
発起人から理事への事務引継が完了したら、出資引受書にもとづいて設立同意者に出資の払込請求を行います。
ウ.設立登記
出資の払込が終わった段階で、2週間以内に所轄の法務局に設立登記を行います。
⑧ 事業開始手続き
商店街振興組合が設立した後、事業を開始するにあたって以下の届出が必要となります。
税務署(法人設立届出書) 都道府県税務事務所(法人事業開始申告書)
市(区)役所(法人設立届出書) 公正取引委員会(組合員に大企業が1社でもある場合)
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